文化庁メディア芸術祭

アニメーション部門
大賞

Rhizome

短編アニメーション(11分25秒)
Boris LABBÉ
[フランス]
Rhizome
©Sacrebleu Productions
 
圧倒的な緻密さと極端な構図で展開される短編アニメーション作品。最小単位から無限に生成される世界は宇宙そのものであり、変容を続けるすべての要素が相関し、影響しあっている。
タイトルは、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズと精神科医フェリックス・ガタリの共著『千のプラトー』(1980)で複雑に展開されるリゾーム(Rhizome)の概念からつけられている。本作では、そのリゾームの原則を網羅しながら、生物学的な意義と哲学観の考察が試みられている。作者によれば、スティーヴ・ライヒの音楽のコンセプトとエッシャーの数学的な作品、そしてボッシュやブリューゲルの絵画と、遺伝学のような生物の進化に関する理論やミクロとマクロの関係などの要素の間に生まれてくるような何かをつくりたいと考えるなかで、このドゥルーズ=ガタリの概念が頭に浮かび創作につながったという。若い作者の興味と欲求を具現化した独創的な作品である。
贈賞理由
もともとアニメーション上では、物のスケールは擬似的なもので、相対的でしかない。この作品は、仮想のスケール空間のなかで、生物とも無機物ともつかない抽象的な形態がつねに変化し、個々の動きが全体の動きへと連なっていく。ミクロからマクロまでをワンカットで見渡す作品は『コズミック・ズーム』や『パワーズ オブ テン』(ともに1968)といった古典的科学アニメーション作品の先行事例があるが、この作品は科学的な視点ではなく、ボッシュのような主観的な世界の認識の様相を、圧倒的なドローイングとデジタル合成の物量で見せきった。ここには未知の生態系を覗き見る喜びがあり、絵に擬似的な生命感を与えるアニメーションの原始的なおもしろさがある。またミクロの世界からズームアウトしてマクロな世界へ行きついた世界がまるで苔のようで、マクロに達したはずの最後に小さな世界を見せられているという、マクロからミクロへの逆転の感覚を覚える点もユニークだ。(山村 浩二)
受賞者コメント
アートとアニメーションの世界でプロとして活動を始めた数年前から、文化庁メディア芸術祭に大きな興味を持ちながら羨望のまなざしで見てきました。国際的にも有名ですし、あらゆる形態の芸術にオープンで、革新的なテクノロジーを歓迎するフェスティバルとして、いつも魅了されていました。
私の作品『Rhizome』が、今回アニメーション部門の大賞を受賞するという名誉をあたえてくださった審査委員の皆様に心からの感謝の気持ちを表わすとともに、誇りに感じています。『Rhizome』は、私にとって重要かつ基本的にポジティブな作品であり、鑑賞者にこれまでにないような映画的経験をしてもらえればと願っています。

プロフィール
Boris LABBÉ
1987年、フランス、ラヌムザン生まれ。現在はマドリッドに居を構えて活動中。グラフィック・アーティストとして活動を始めたが、最近は、既存映画の時間・空間形式を離れた映像インスタレーション的アニメーションを発表している。
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