文化庁メディア芸術祭

アニメーション部門
優秀賞

花とアリス殺人事件

劇場アニメーション(1時間39分)
岩井 俊二
[日本]
花とアリス殺人事件
©2015 “the case of hana&alice” Film Partners
 
実写映画のつくり手として広く知られる作者の初の劇場用長編アニメーション作品である。作者が監督を務めた実写映画『花とアリス』(2004)制作直後から構想が立てられた本作は、当時と同じキャストが集められ、プロローグとなる荒井花(通称:ハナ)と有栖川徹子(通称:アリス)の2人の出会いのエピソードが語られる。転校してきた中学3年生のアリスは、「1年前、3年2組の教室でユダが4人のユダに殺された」という噂を聞く。さらに、アリスの家の隣が「花屋敷」と呼ばれて恐れられていることを知る。花屋敷に住む引きこもりの同級生ハナとアリスの、「ユダ」をめぐる「世界で一番小さい殺人事件」の謎を解く冒険が始まる。実写で撮影した動画をもとにアニメーションとして描き起こす制作技法「ロトスコープ」と、セル画で制作されたアニメの質感を追求する「セルルック3DCG」の手法を組み合わせた映像によって、小さな出来事の瞬間瞬間を真剣に受け止め、悩み、そして笑う少女たちの心情をコミカルに描きだしている。
贈賞理由
実写映画の方法論を直に絵の画面へ置き換えてアニメーション化することで、「作品のカテゴリーとは何か?」を深く考えさせられる作品である。昔、ラルフ・バクシ監督の『指輪物語』(1978)で、ロトスコープの技術を用いて絵にしたときに生まれる、妙なリアリティにワクワクしたのをこの作品でも思い出した。膨大な実写素材の撮影技術も素晴らしく、実写撮影監督を務めた神戸千木さんの才能があますことなく感じられる。また、キャラクター・デザインの処理作業が魅力的になされているのもこの作品のよさである。ロトスコープ・アニメーション・ディレクターを務めた久野遥子さんは、相変わらずセンスがよい。動きが巧い。シナリオのアプローチもよい。アニメーションならではのよさを、鮮やかな清涼感とともに浮き彫りにしている。キャラクターのどこを簡略化するかによってセンスが問われるので、スタッフが今回の経験で学んだことを次の作品づくりにどう生かせるのかが楽しみである。音が少し小さめな点が気になったが、心地よい作品であった。(森本 晃司)
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