文化庁メディア芸術祭

アート部門
大賞

50 . Shades of Grey

グラフィックアート
CHUNG Waiching Bryan
[英国]
50 . Shades of Grey
©2015 Bryan Wai-ching CHUNG
 
本作は、プログラミング言語を使用した、コンセプチュアルであると同時に視覚的な作品で、額装した6枚のシートで構成される。作者は、過去30年間に学んださまざまなプログラミングの言語やソフトウェアを用いて、50段階の灰色のグラデーションでできたまったく同じ画像を制作した。タイトルはオンライン小説として発表され、後にベストセラーとなった『Fifty Shades of Grey』という大衆小説を参照している。かつて広く普及していた数々のソフトウェア・ツールは、現在ではそのほとんどが使用されなくなっている。コンピュータ産業においてもデジタルアートにおいても、前時代的になることへの恐れはつねにつきまとう。作者は、それらのプログラミング言語の一つひとつと旧友のように接し、それを最新の機械のなかに取り込み、新しい外貌やエネルギーをもたせて再活性化した。これまでに開発された異なるテクノロジーが盛衰してきたさまを可視化する作品である。
贈賞理由
物質的存在感を持つアナログメディアに対して、デジタルメディアは、基本的には物質性を有さない。その代わり、その背後にはハードウェア=機械と演算という不可視な世界が控えている。そして、その両者をつなぐのがプログラミング言語である。『50 . Shades of Grey』では、黒から白への50階調のグラデーションを表示させるための6種類のソース・コードのみが展示される。それぞれまったく異なった視覚的特徴を持つ文字列は、ハードウェアでの演算を経てディスプレイ上で同一のイメージを導きだすだろうが、観者にその結果は示されない。印字されたコードは、多くの観者にとっては解読不能な、いわばデジタル・イメージの無意識として提示されるだけである。作者によれば、6種の言語は、コンピュータ技術の進化と陳腐化の歴史を表象する。一方で作者と同年生まれのBASICから2000年のActionScriptまでの言語が、それぞれ作者の人生と重ね合わされて語られる。作品の見た目は、素っ気なくさえ見える簡素なものであるが、そこに異質な層が徐々に見えてくる豊かさが評価された。(佐藤 守弘)
受賞者コメント
『50 . Shades of Grey』を評価してくださった審査委員には本当に感謝したいと思います。本作は、デジタルメディアアーティストとして、いかなる新しい技術もコンピュータをも使用せずに展示する、初めての作品です。
すべてのプログミング言語とソフトウェア・ツールはすぐに古い技術になってしまいます。私は、詩的なテキストのようにコードを書きました。この作品の制作過程は、古い友人に再会したり、すでに消滅してしまった古い場所を訪ねていくようでした。どんどん短縮されるIT関連の製品の活用サイクルは、私たちに内省させる余裕と時間を残してくれます。
私は、この作品と今回の受賞が、すこし落ち着いて、周りを見回し、足元を確認して、そしてこれからの未来を再考する機会を私たちに与えてくれることを望みます。

プロフィール
CHUNG Waiching Bryan
1964年、香港生まれ。メディアアーティストであり、現在、香港浸会大学の視覚芸術アカデミーで、インタラクティブアートおよびマルチメディアを教える。
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