文化庁メディア芸術祭

エンターテインメント部門
大賞

正しい数の数え方

音楽劇
岸野 雄一
[日本]
正しい数の数え方
©2015 Out One Disc
 
本作は、子どもたちのための音楽劇であり、人形劇+演劇+アニメーション+演奏といった複数の表現で構成される、観客参加型の作品である。2015年6月、フランス、パリのデジタル・アートセンター「ラ・ゲーテ・リリック」の委嘱作品として上演された本作は、1900年のパリ万国博覧会が舞台となっている。公演のため日本からパリを訪れた「川上音二郎一座」が、万博のパビリオン「電気宮」に現われた「電気神」が観客にかけた呪いを解くため、「正しい数の数え方」を求めて旅へ出る冒険物語である。
古来から存在する人形劇というアナログな手法と、インタラクティブなテクノロジーが随所で融合し、物語は展開していく。同年に東京で行なわれた公演では、作者率いるバンド「ワッツタワーズ」の生演奏も加わり、より挑戦的な試みが行なわれた。舞台芸術の可能性の拡張に挑んだ意欲的なエンターテインメント・ショーである。
贈賞理由
これまでに数限りない地下文化貢献活動に取り組んできた勉強家=岸野雄一は、この作品で新派劇の父=川上音二郎をモチーフに、子どもたちとのインタラクティブな交流を写しだす演劇装置を生みだした! 岸野の「演芸/演劇」の魂には、批評性と実験性が染み込んでおり、これまではハイコンテクストとして捉えられていた節もあるが、本作では見事に幼年層を巻き込んで大衆性を帯びたのだ。「つくって遊び、数えて学ぶ」これらエデュケーショナルな精神は、実験を超越したシミュレーショニズムとして、昭和の子ども番組から受け継いだ正統な系譜でもある。また、これまでのメディア芸術祭受賞者も紛れ込んだ6人のアニメーターとのコラボ動画が舞台の背景を固め、これら舞台装置そのものが映像史をも飲み込んだ、文字通りの「メディア」と化している。この全身勉強家の複合芸術を“メディア芸術”と呼ばずに何を“メディア”、そして“芸術”と呼ぶのか? 本作は、昭和でも平成でも、そして未来でもなく、お手軽なテクノロジーに埋没しない原初的なアニマが脈打っているのだ!(宇川 直宏)
受賞者コメント
この度はみんなで作り上げたステージに対して栄誉ある賞をいただき、とても光栄に思います。私は学問として芸術を学生に教えている立場にありますが、自分自身の表現のスタンスは、大衆芸能、見せ物、といったものです。道端(ストリート)という市井にこそもっともメディアとしての可能性を感じており、アートのフレームのなかに安住する事を避けてきました。というのも、歌舞伎でも浮世絵でもそうですが、当初は芸術ならざるものであった表現を、100年以上かけて芸術として評価するに至る目利き、見立ての良さを、市井は持っていると信じているからです。例えば鶴屋南北や歌川国芳が現代のテクノロジーを使ったらどんな愉快な表現をするだろうか? そんな事を考えながら大勢の人たちを楽しませる表現をしていきたいと考えています。

プロフィール
岸野 雄一
1963年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科、美学校等で教鞭をとる。「ヒゲの未亡人」、「ワッツタワーズ」などの音楽ユニットをはじめとした多岐に渡る活動を包括する名称としてスタディスト(勉強家)を名乗る。
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