文化庁メディア芸術祭

エンターテインメント部門
優秀賞

Thumper

ゲーム
Marc FLURY / Brian GIBSON
[米国]
Thumper
©2015 Drool LLC
 
この作品は、従来のリズム・アクション・ゲームにスピード感と身体感覚を結合させた「リズム・バイオレンス・ゲーム」である。「宇宙甲虫」となったプレイヤーは、轟くドラム音と不気味なシンセサイザーの爆発音とともに、曲がりくねったレールをひたすら疾走する。そして、シンプルな操作で障害物をよけ、サイケデリックな怪物を倒していく。ゲームの動作とビートを合わせる仕組み自体は目新しいものではないが、映像と音響効果がぴったりと一体化しているため、一挙一動が猛スピードにさらわれる感覚と荒々しい身体感覚を呼び起こす、まったく新しい「リズム・バイオレンス」の興奮を生みだしている。
ゲームの世界に属する音とその外側の音(効果音)という従来の関係を打破しながら、自動生成やアルゴリズムによる作曲法から発想を得て、「異界のミュージック・コンクレート」ともいうべき音が奏でられている。
贈賞理由
私たちは鋼鉄の虫として『Thumper』の世界に降り立ち、湾曲するレールを疾走する。目覚めると虫になっていた人間。カフカや日野日出志が描いてきた、この世の不条理に対する内省的な葛藤は、問答無用のスピードによって置き去りとなる。そこから無限のサイケデリアへ突入していく感覚は、80年代初頭のアニメーション映画の怪作『Heavy Metal』(1981)と通底する。虫のギラついた質感が「ヘビー・メタル」の本来的な意味、自由を求める鋼の精神を体現している。また「リズム・バイオレンス・ゲーム」と銘打たれた本作は、トラックメーカーの生理から生じるグルーヴに同期することが要求される。明示された符丁を狙い打つ従来の音楽ゲームとは明らかに異なる生々しい感触がある。同期はこの世界における通過儀礼であり、成功の対価として過剰なエフェクトが発生する。知覚の歪みの反復の果て、到達した世界の深奥に何者かの「顔」が浮遊している。それは、私たちが彼方に置き去った葛藤の化身であろう。(飯田 和敏)
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