文化庁メディア芸術祭
第22回

アニメーション部門

大賞

La Chute

短編アニメーション

Boris LABBÉ [フランス]

©︎ Sacrebleu Productions

作品概要

ダンテ・アリギエーリの『神曲地獄篇』に着想を得た短編アニメーション。墨汁と水彩絵具による約3,500枚の絵をデジタル編集し、そこに弦楽奏の断片的な響きと電子音によるオリジナルの音楽が重ねられる。シーンは前半の地上と天上、そして後半の地獄界とに大きく分かれる。種のようなものがあり、そこから根が伸びることで形づくられる地上では、植物と人間が互いの姿に変容しながら命が循環している。その上空では、鳥のようでもあり人のようでもある姿をした天の住人が渦を描いて舞っている。墨絵の白と黒を反転させることで独特の暗さを持つ画面のなか、植物、人、天の住人の中心部では鮮やかな色が躍動し、生命力が表現される。やがて地上には、楽器のような道具や建物が現れる。中盤、天の住人が舞い降りて地上の住人と交わると巨人が誕生した。巨人は地上人を食べ、地上人たちは争い、世界の破壊が始まった。やがて天上人が地上に墜落し、地獄が誕生する。ルネサンス期のサンドロ・ボッティチェッリから、ピーテル・ブリューゲル1世、フランシスコ・デ・ゴヤ、ヘンリー・ダーガーまで、西洋美術史を彩る巨匠の作品を参照しながら、循環、変容、堕落と再生という壮大なテーマを描く。

贈賞理由

究極の眺める作品であり、感じる作品である。重く、暗く、淡々と描かれる世界は平静を保ちながら見ることを拒むかのようで胸が騒ぐような感情を常に抱かせる。執拗に続く反復表現、動きあるパーツたちはパズルを組み合わせるかのごとくさまざまな空間に配置され、浮遊するような視点をもって全貌を見ることができる。全篇に流れるサウンドは映像と同様にミニマムかつシンプルな組み合わせで独特の世界を生み出すことに成功し、映像と混じりあうことで妖しい世界をさらに助長させている。作者の類まれなるセンスを感じる表現は、誰もが到達できるレベルではなく、観念せざるを得ないような境地を抱かせ、アート作品としての力強さと存在感を感じる。個々の小さな個性が集まり集合体の個性を生み出すさまは、現実の人のあり方をも連想させる。混沌と混乱、調和とで独自の美を生み出し、ミニマルアニメーションとして隙のない、非常に完成度の高い作品に仕上がっている。(森野 和馬)


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