文化庁メディア芸術祭
第21回

アニメーション部門

大賞

夜明け告げるルーのうた

劇場アニメーション

湯浅 政明 [日本]

© 2017 Lu Film partners
作品概要

『マインド・ゲーム』(2004)、『四畳半神話大系』(10)、『ピンポン THE ANIMATION』(14)などで知られる湯浅政明による、全編フラッシュアニメーションを用いたオリジナル劇場アニメーション。両親の離婚で寂れた漁港の町・日無町に引っ越してきた中学生の少年・カイは、父や母への複雑な想いを口に出せず、鬱屈した気持ちを抱えながら学校生活を送っていた。カイの唯一の心の拠り所は、自ら作曲した音楽をネットにアップすることだった。ある日、クラスメイトにバンドに誘われたカイが練習場所の人魚島に行くと、人魚の少女・ルーが現れた。楽しそうに歌い、無邪気に踊るルーと出会ったカイや町の人々は、少しずつ自分の気持ちを口に出せるようになっていく。しかし、日無町では古来より人魚は災いをもたらす存在とされ、ルーと町の住人たちとの間には溝が生じてしまう。本作は、「心から好きなものを、口に出して『好き』と言えているか?」という、湯浅が抱いた疑問が出発点となっている。随所に挟まれる歌とダンスの場面は、独特な遠近法や色彩感覚、自在に揺らぐ造形、メリハリのある滑らかな動きによって描かれ、作品に生き生きとした躍動感を与えている。

贈賞理由

閉塞感にまみれた環境のなかで、好きなこと、やりたいことを見つけ出していくというテーマはオーソドックスなものではあるが、時代に逆行するようなシンプルな絵とデフォルメの効いたやわらかい動きで軽快に魅せてくれている。純粋の塊のようなルーと、それぞれ登場人物の抱えている問題や希望が過不足なく描かれていて、それが物語にリアリティを持たせているため、ファンタジー要素もすんなりと受け入れることができる。まだ見ぬ未来を望む若者、現実を受け入れつつ変化しようとする大人、そして過去にこだわる老人たちの対比は見事だった。この手の作品は若者の描写に終始しがちだが、町の大人・老人たちまでキチンと描かれている点は、湯浅監督の気配りとテーマへの一貫したこだわりを感じるとともに、作品への愛情も感じられて観終わった後がとても気持ちよかった。カイの心の象徴としてのルーとお陰岩。この2つの描写には特に目を見張った。(宇田 鋼之介)


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