文化庁メディア芸術祭
第21回

アニメーション部門

優秀賞

Negative Space

短編アニメーション

KUWAHATA Ru / Max PORTER [日本/米国]

© 2017 IKKI Films / Manuel Cam Studio Photo: 2017 IKKI Films / Manuel Cam Studio

作品概要

出張の多い父親とその息子のあいだの、鞄を通じた交流の物語。スーツケースという小さな空間へ、いかに効率的に荷物を詰め込むかが、遠く離れることの多い親子にとっての密なコミュニケーションのかたちとなっていた。少年は大人になり、かつてのその記憶を思い出す。アメリカとヨーロッパを拠点に活躍する桑畑かほるとマックス・ポーターのコンビ「Tiny Inventions」が、フランスのプロダクション会社、IKKI FILMSとManuel Cam Studioと共に制作した人形アニメーション作品。アメリカの詩人・小説家であるロン・コージの散文詩「NEGATIVE SPACE」を原作として、そこにパイロットゆえに旅の多かった桑畑自身の父との思い出が混じり合う。その結果、あらゆる世代の心に染みわたり、誰もが自分自身の親子関係について思いを馳せるような、余韻と叙情に溢れた物語が完成した。

贈賞理由

作品の冒頭でカバンの中身が俯瞰に並べられていくさま、この絵面で作品に引き込まれた。良い作品には印象的なカットが存在するが、この1カットで作品の質、監督の力量が見て取れるようであった。別の場面では、シャツやシューズ、ベルトたちが生き物のような躍動感でカバンに収まっていくさまが描き出され、静物が命を吹き込まれ動き出す輝き、そんなアニメーションの魅力の原点が画面に創出され、笑みが自然とこみ上げてきた。デザインも秀逸であり、キャラクターの表情、やさしいフォルム、デフォルメされた車や建築物、どれもセンスを感じさせる。ストーリーはシンプルであるが、場面転換などで用いるさまざまなアイディアは、ハッとするような流れをつくり出している。全体のやわらかい色彩も美しく、品のよいムードを醸し出す。鑑賞後も温かい気持ちとともに、上質な作品に出会えた喜びを感じさせた。そんな作品をつくり上げた監督は見事である。(森野 和馬)


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