文化庁メディア芸術祭
第22回

アニメーション部門

優秀賞

若おかみは小学生!

劇場アニメーション

高坂 希太郎 [日本]

© Hiroko Reijo, Asami, KODANSHA / WAKAOKAMI Project

作品概要

人気児童文学シリーズ、令丈ヒロ子『若おかみは小学生!』が原作の劇場アニメーション作品。交通事故で両親を亡くした小学生の「おっこ」こと関織子は、祖母が経営する旅館・春の屋に引き取られ、さらに若おかみに名乗りをあげてしまう。初めての仕事に戸惑いつつも、幽霊となった祖母の幼馴染の男の子・ウリ坊や、ライバル旅館の娘である秋野真月など、身の回りの人々や個性豊かな宿泊客と交流し、若おかみとしての自覚を深めていく。作品は原作のエピソードにオリジナルの要素も追加し、ひと塊の物語としてまとめあげた。SNSでの口コミを中心に、原作の読者層である児童の枠を超えて成人層からの評価も高まり、上映館の拡大や再上映が行われたことも話題に。宮崎駿監督作品をはじめとするさまざまな作品に原画や作画監督として名を連ねてきた高坂希太郎が、本作では『茄子アンダルシアの夏』(2003)以来の劇場作品の監督を務め、改めてその存在感を示した。

贈賞理由

小学生の女の子が行う家の手伝いはありふれたことであろうが、宿を切り盛りする女将が小学生である設定には飛躍がある。しかしその飛躍が、女の子の誠実さや熱心さによって補われ、大人たちも、うまく連携を保つところが心地よい。一人の女の子が突出して出来事を解決するのではなく、大人たちも一緒になって協力する人間関係が、小学生の成し遂げる仕事に生かされる。その大人との連携は、いくつかの段階を経て成し遂げられる。そもそも女の子は、両親を交通事故で失い、一人生き残ったことの心の傷を抱える。その傷を補うように複数の幽霊が見える。幽霊たちは、決して怖い存在ではなく、女の子の心の傷に寄り添い、失われた関係を補う役割を担う。幽霊を媒介しにして、現実の人間関係が豊かになっていく。女の子にとって、幽霊を見るというファンタジーが現実への適応の促しとなり、人間関係を広げていく媒介になる明朗性は、見ていて楽しい。(横田 正夫)

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