文化庁メディア芸術祭
第20回

アート部門

優秀賞

培養都市

映像インスタレーション

吉原 悠博 [日本]

© Yukihiro Yoshihara
作品概要

東京都心から新潟の柏崎刈羽原子力発電所までの「高電圧送電ケーブルのある光景」を4K一眼レフカメラで撮影/編集し、縦長の映像で投影する映像インスタレーション。投影にはハイビジョンプロジェクターが用いられている。2012–15年の約2年半のあいだ、両地域を結ぶ山間部のダム、国内最長河川・信濃川沿いの町村を何度も往来して撮影された。新潟は日本有数の米作地域である。そこを流れる信濃川を分水し美田を保つための治水システムが完成を迎える1970年頃に減反政策が始まる。またその頃、原子力発電所の計画が動き出した。急速に経済発展した日本のなかで、互いに依存しあう東京と新潟との関係が鮮明になる。巨大電力消費地・東京に暮らす人々への、またかつて東京に生きた新潟県民である作者自身への問いとして、高電圧送電ケーブルが象徴する「地方と首都の極端な非対称関係」を顕在化させた。

贈賞理由

私を含め、都市の住人が普段目にしないものが高圧線とそれを支える鉄塔である─大量の電力を日々消費している都市は、それなしではその「生命」を維持することはできないのにもかかわらず。ただ一旦都市を離れると、高圧線と鉄塔が風景のあらゆるところ─田園風景や山村風景などと想起される場所─に点在していることに気づく。そもそも現代社会を支える下部構造としての電力は、発電所と消費の場を結ぶネットワークなしでは成り立たないが、それが視界の外にあることで、私たちの生活がその端末に吊り下がってはじめて成立していることもまた隠蔽される。本作は、都市を「培養」する不可視のネットワークを、高圧線や鉄塔のある風景の連続によって可視化する試みである。しかもその風景は、動画としてある一定の時間=持続を持つことで動きや音を取り込み、断片化された生の連続として体験される。風景表象の新たな可能性を感じさせる作品である。(佐藤守弘)


プロフィール
吉原 悠博
日本
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