文化庁メディア芸術祭
第20回

アート部門

大賞

Interface I

メディアインスタレーション

Ralf BAECKER [ドイツ]

© 2016 Ralf Baecker
作品概要

192個の直流モーターを用いて「構造と行動の関係」を探求するキネティック・インスタレーション。各モーターは上下一対のペアになり、両者をつなぐ糸の綱引きが生じる構造となっている。これらが水平に並ぶなか、各々をつなぐかたちで赤いゴムバンドが網目状に広がっている。すなわち、すべての要素がつながり、影響し合うシステムとなっている。モーターのトリガーはガイガー=ミュラー計数管で、これらが地球上の予測不能な環境放射線を感知する。そこから発せられるランダムな波形によってモーターが個別に駆動し、これらの相互接続システムが本作を特徴付ける「複雑かつ突発的な動き」を生成する。作者はこの動きを、生物学、社会科学、コンピュータ・サイエンス、人類学から、経済学や政治学に至る、異なる尺度・領域に発生しえるものと捉えている。本作は、表出されるもの自体に、プログラムや指揮系統を介在させず、結果に関わる決定的役割を与えることで、プロセスと出力のあいだの差異を消失させた「インタフェース」である。そのことが、世界の多様な「構造と行動の関係」について豊かな示唆をもたらす重要な要素となっている。

http://www.rlfbckr.org/work/interface-i/
贈賞理由

暗闇のなかに赤い糸が蛇のようにぎこちなくうねっている。自然環境からの刺激(入力)を受けたモーターが示すランダムな動きは、それらがお互いにつなぎ合わせられることによってひとつのシステム─系、制度、機構─を構成する。その結果として現われるのは、折れ線グラフのようにも、19世紀の生理学者が撮影した連続写真のようにも見える、秩序だった美じままである。個々の不作為的で自儘な動きが、システムの複雑な相互作用によって統御される様子は、現代社会や国際経済、生命体などのメタファーとも受け止められるが、何よりもデジタル・イメージの構造─コンピュータの中での複雑な計算と、その結果として表示される静的で秩序立ったイメージという対照─の可視化を目指したと作者は言う。本作は、世界の表象とミクロな構造の具象化を機械的なシステム構築によって結びつけた点が、高く評価され、大賞につながった。(佐藤守弘)


受賞コメント

20回の歴史と実績を持つ文化庁メディア芸術祭で、アート部門大賞を受賞したことを大変光栄に思います。この作品を評価し、選出してくださった審査委員の方々にはとても感謝しています。『Interface I』は、現代におけるテクノロジーの物理的な存在や複雑なシステム、物質と思考の相互作用についての長期にわたる研究と考察の結果です。この作品の背景として核となるアイデアは、ノイズを邪魔なものとして捉えるのではなく、変化と新しい視点を可能にする触媒として理解するというものです。現在私は、今ある技術原理と放棄され忘れられた方法、理論、材料とを結びつけることに挑戦しています。この研究を、異なる時期や文化にまたがる技術的にハイブリッドな作品にこれからつなげていきたいと思っています。

プロフィール
Ralf BAECKER
ドイツ

1977年、デュッセルドルフ生まれ。基礎的メカニズムやテクノロジーが社会に与える影響の研究を行なう。ブレーメン芸術大学で新技術による実験デザイン分野の教授を務める。

http://www.rlfbckr.org/
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