文化庁メディア芸術祭
第21回

アート部門

優秀賞

Language Producing Factory

映像インスタレーション

DAI Furen [中国]

© Furen Dai Photo: Furen Dai

作品概要

中国湖南省江永県の山村で女性だけに伝承された言語「女書」をテーマにした映像インスタレーション。女書はかつて教育を受けることができなかった同地の女性たちが、生活のなかで感じる気持ちを語り合うために生み出されたとされる。言語に強い関心を持つ作者は、研究のため2015-16年に同地の村を訪れ、観光客向けのパフォーマンスとしてわずかな賃金を対価に女書を使うことを強要されている女性たちに出会った。本作の場面では、上役の女性が紐を引くと、牢屋のような部屋に同じ青い制服を着て座っている3人の女性の三つ編みが紐に引っぱられ、彼女たちは指示された文字を布に刺繍し始める。やがて女性は作業を続けるなかで自ら布の中に閉じ込められ、そのまま刺繍とともに商品として売られていく様子が描かれる。絶滅の危機に瀕する言語として注目されている女書やそれを取り巻く文化が商品として扱われるさまを風刺的に描く。

贈賞理由

作品の冒頭、中国湖南省江永県の少数民族に伝わる「女書」を継承し生業とする現代の女性たちが、「ことばを生産する工場」に「出勤」し、ナイキのスニーカーや私服を「衣装」に着替えて「仕事」に就く。彼女らは、映画『未来世紀ブラジル』(1985)やマシュー・バーニーの「クレマスター」シリーズを想起させるような、ファンタジックに動く機構や鮮やかな色彩のなかに囚われている。女書文字を書いたり刺繍を刺したりしているうちに、彼女らは自ら糸を引き絞り、がんじがらめになっていくように見える。また本作終盤には、本物の江永県の風景や女性らが束の間だけ登場している。ヴェネチア、カッセル、ミュンスターなどで開催された現代芸術祭が10年周期の惑星直列を見せた2017年、社会の不条理を突く陰鬱な作品群がまるで不幸自慢のように各地に溢れた一方で、本物を登場させつつ、どこかおかしみを忘れないメディア芸術的視点を通底させて描き出した点で、本作を高く評価したい。(森山 朋絵)


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