文化庁メディア芸術祭
第22回

アート部門

優秀賞

Lasermice

メディアインスタレーション

菅野 創 [日本]

©︎ 2018 So Kanno

作品概要

ホタルなどの群生する生物に見られる同期現象に着想を得た60台の自走する小型ロボットを用いて、有機的にリズムを生成するインスタレーション。群生生物は、各個体が互いにコミュニケーションすることで一斉に行動する。生物の場合、そのコミュニケーションは不可視だが、本作ではレーザー光によってコミュニケーションをするため、そのネットワークは視覚的である。ロボットは互いの発するレーザー光に呼応して、レーザー光と同時に打撃音を発する。鑑賞者は常に変化するそのリズムを、音と光によって空間的に認識できる。私たちは蛙の合唱や鈴虫の鳴く声、群れで舞う鳥の大群といった自然の営みを美しいと感じ、鑑賞する。鑑賞に値する自然のようなものを人工的につくれないだろうか。このプロジェクトは自然現象のアルゴリズムに着想を得て、且つ単なる模倣ではないオリジナルのアルゴリズムをつくることによって新たな表現を模索する試みである。

贈賞理由

シンプルな組織と自律性、一定のループ性を持ったロボティクスが相互感知することで、群として独自の振る舞いをなす作品である。同期から出発して徐々に外れながらさらなる同期を生み出す過程を可視化しており、約50m²のエリアに総数60の小型のロボティクスが、回転しながらゆっくり自走する。それらは一定タイミングでレーザー光を発し、それと同時に機械の打鍵によって発音する。光感知センサーによる反応時に次の発光/発音を起こすが、連鎖反応により驚くような変化や沈黙のダイナミズムが生まれるさまは壮観である。人工生命プログラムによる群シミュレーションは以前から検証されているが、物体による生成の生々しさを基調に据えた表現性は端倪できぬもので、各機械パーツのセレクトからロボット製作、システム設計に至るまで、作家の緻密かつ持続的な研究力なしには到達できないレベルを示している。これが600個の個体によるインスタレーションになった場合はどうなるだろうか。(阿部 一直)

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