文化庁メディア芸術祭
第22回

アート部門

大賞

Pulses/Grains/Phase/Moiré

サウンドインスタレーション

古舘 健 [日本]

Ⓒ Kouji Nishikawa

作品概要

300台を越えるスピーカーとLEDライトを使用した、大規模なサウンドインスタレーション。2018年1月から3月にかけて開催された「AOMORIトリエンナーレ2017」のプログラムのひとつとして、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸で初めて発表された。コンピュータで制御される自作のジェネレーターに接続されたスピーカーがそれぞれ個別のパターンで音を発生する。また、各スピーカーに付随するLEDライトも、スピーカーの発音パターンに合わせて同じタイミングで明滅する。各個のスピーカーは一定の規則にしたがった単純なクリック音とLEDの発光しか行わないが、それらが鑑賞者を囲うように壁面一体に設置され、音と光が重層的に合わさることで、複雑なレイヤーが存在する新たな音響環境を形成する。照明を控えた空間の中で、多様なパターンを持った音と光が複合して有機的な波のようになり、鑑賞者の視覚と聴覚に向かって次々と押し寄せることになる。これまでサウンドアートプロジェクト「The SINE WAVE ORCHESTRA」のメンバーとして、ミニマムな要素と特性を拡張させて複雑な音響現象をつくり上げてきた作者。本作は初のソロインスタレーションとして、その作家性と創作の志向が存分に発揮された。

贈賞理由

大量のスピーカーとLEDを壁一面に碁盤の目のように配置し、絶え間なく明滅する光のパターンとスイッチのような機械的サウンドが持続的に同期し、漆黒の巨大な空間を充満させている。現在は詳細で大量なデータがつくり出す過剰性に世界が翻弄されている時代である。その人の知覚を超える過剰性が2010年以降のデジタル世界を象徴するものとすれば、本作品はそれをアナログ的に現実世界に再構築した作品とみなすことができる。作者は大量のミニ・スピーカーとLEDを地道に配線しマイコンで制御することで、この巨大なシステムに生命性をインストールした。ぶっきらぼうに生成される音と光の空間は、周期的なパターンとアナログ的なゆらぎによって自己組織化し、あたかもひとつの有機的な建築物の中にいるような体験をすることができる。この作品の持つ建築的で強度ある空間に入ることに不思議な心地よさがあるのは、そうした生命性ゆえかもしれない。(池上 高志)


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