文化庁メディア芸術祭
第20回

アート部門

優秀賞

The Living Language Project

ハイブリッドアート、メディアインスタレーション

Ori ELISAR [イスラエル]

© Ori ELISAR
作品概要

自然と文化、バイオ・デザインと言語学の境界を探求する研究プロジェクト。2000年のあいだ死語と考えられてきた古ヘブライ文字に対する、新たな進化プロセスを提案する。作者は、高い情報交換・処理能力を持つとされる土壌細菌「パエニバチルス・ボルテックス」から抽出したバイオインクで、古ヘブライ文字の形をペトリ皿の上に形成し、さらに現代ヘブライ文字の形を細菌の食物となるプロテインで描き、細菌増殖により、自ら現代ヘブライ文字へと進化するものとして創造した。細菌の繁殖は、給餌や気温など諸条件が影響する。ここでは、生体構造の行動を制御することと、自然の成り行きに任せることの両者の緊張関係が扱われる。それらを通じて、生きた言語が発達する様の探求を試みている。作者は調査・実験とその結果に加え、独自の理論も援用し、自然、文化、そして文字および言語を考察する。そこには、生物学的な創造の世界でもテクノロジーとデザインの相互作用は可能か、という問いも存在している。

http://orielisar.com/
贈賞理由

国際フェスティバルなどを通してバイオアートが世界的に注目を集め、複数領域にまたがり展開される広義の「ハイブリッドアート」の一例としても認知されて久しいが、裾野が広がるとともにハイコンテクストかつ難解なまま提示される作品も増え、表現としての完成度がより問われるようになった。文字どおり「生きた」言語としてのバクテリアとペトリ皿をメディアに、数千年のあいだ死語であった古ヘブライ語の文字を現代ヘブライ文字へとモーフィングさせる本作では、言語学と考古学を専攻したデザイナーが、シンプルかつダイレクトな問いかけを非常に明確に表現し、高く評価された。微生物による古代文字のモーフィングには、予測不可能な繁殖のプロセスが変数としてコミットする。それは、文明や文字や文化がどう移り変わろうと、器や乗り物であるメディア、その名称さえもが変容しようとも、次世代に継承されていくべきメディアアートの姿を想起させる。(森山朋絵)


プロフィール
Ori ELISAR
イスラエル
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