文化庁メディア芸術祭
第22回

アート部門

新人賞

Total Tolstoy

メディアインスタレーション

Andrey CHUGUNOV [ロシア]

作品概要

「利己とは狂気。狂気とは利己」(レフ・トルストイ、1902年11月4日の日記より)。19世紀のロシアを代表する文豪、トルストイがロシア正教会から破門された1901年から亡くなる1910年のあいだに執筆した日記を基に、日記が執筆された10年を約11分間の色と音声で表現した作品。トルストイはエゴイズムを人間が持つ最大の悪徳のひとつとみなしたが、彼自身もその影響力を周囲の人に誇示していた。音声は、日記で使われた代名詞「I」ひとつを1ヘルツに換算し、年ごとに生成した10の「声」を組み合わせた「トルストイの『聖歌隊』」のうち、その年の「声」がソリストとして一番大きく響く。映像は、日記中の「I」(トルストイのエゴを表す)、「We」(トルストイの社会的なアイデンティティを表す)、「God」(神の概念がトルストイに与えた影響を表す)の数を、それぞれ赤、緑、青として三原色(RGB)に換算したものである。

贈賞理由

ロシアの文豪レフ・トルストイの1901–10年の日記中に登場する名詞「私」「我々」「神」の頻度を解析することでミニマルなデータアートを構成。名詞の使用頻度は正弦波の変化とRGBに割り当てられて表現されるが、この手法では微細な頻度の変化を可感化できる。現代の若い世代は、一般的に昔の文豪の長編を読まない傾向にあるが、今日的な視点を含んだ『戦争と平和』(5年にわたる雑誌連載)を描き出したトルストイに注目し、また日記という長期にわたる断続的継続としての時間感覚を、異なるフェイズの表現に置き換えたアプローチは衆目に値するだろう。(阿部 一直)


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