文化庁メディア芸術祭
第22回

エンターテインメント部門

新人賞

映像作品

大森 歩 [日本]

作品概要

映像制作会社のディレクターとして活躍する作者が、監督と脚本を務めた自主制作の短編映画。主人公・アミ(古川琴音)は、祖父の家に居候をしながら美術大学に通っている。日々、小さな人生経験を積み重ねながら大人になっていくアミとは対照的に、認知症が進んで次第に子供返りしていく祖父(花王おさむ)。美大で創作に向き合っているアミ、かつて戦争に行っていた祖父、大きく異なるかのように見えるそれぞれの人生だが、やがて2人の心情が重なり、同期する瞬間が訪れる。本作は、京都国際映画祭2018のクリエイターズ・ファクトリーでエンターテインメント映像部門の最優秀賞を受賞するなど、専門家からも高い評価を受けることとなった。

贈賞理由

まだ何者にもなれない女子美大生が、幼児退行していく老爺のワンオペ介護を強いられるという赤裸々すぎる図式で、現代日本の問題をミニマルに凝縮した、よく練られた短い「邦画」。同時代の話題作『万引き家族』は、「普通」への包摂から排除された者たちの束の間の紐帯を描くことで、戦後中流の幻想の崩壊をマイルドに浮き彫りにした。本作はその逆を衝き、なまじ血縁の呪縛があるからこその他者性のはげしさを、彩度を抑えた硬質な画づくりで観客に投げ出す。その葛藤の果てに若者が見出す一瞬の共感可能性の鮮烈さに、強く惹かれた。(中川 大地)


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