文化庁メディア芸術祭
第20回

マンガ部門

優秀賞

未生 ミセン

ユン・テホ/訳:古川 綾子/金 承福 [韓国/日本]

© Yoon Tae Ho 2016
作品概要

韓国を舞台に会社員の哀歓をリアルに描き出した群像劇。「未生(ミセン)」とは韓国特有の囲碁用語で、「死んでもいないし、生きてもいない石」を意味する。主人公のチャン・グレは囲碁のプロ棋士を目指し、弱冠10歳で韓国棋院の研究生となった。だが、プロ入りに失敗し棋界を去ることになった彼は、流されるまま縁故で大手総合商社のインターンシップとして働きはじめる。そして一筋縄ではいかない上司や、それぞれの思惑を秘めたインターンの同期と向き合いながら、正社員採用を目指す。満足な職歴も学歴もない彼が、囲碁で培った思考力を武器に、会社という盤上で碁を打つ。実際の棋士たちの名勝負と重ねあわせながら、日々仕事に葛藤する「会社員」の姿と韓国の現代社会が描かれている。作品は最初にウェブ上で発表され、2014年には韓国でドラマ化され、社会現象となった。日本でも2016年に『HOPE~期待ゼロの新入社員~』としてドラマ化されている。

贈賞理由

読者はまず絵を見る。マンガ家は絵に自分らしい特徴を持たせるため研究したりするのだが、不思議なことになぜか国によって拭えない特徴が出る。このマンガもそうだった。作者の名前を見るまで、どこか近寄りがたくも新鮮さを感じた。画力のある絵と物語に引き込まれていく。かつての囲碁の天才少年が商社で働くというのは、夢物語のようでありながらも、現代韓国の若者の問題が内包されているのが透けて見える。登場人物たちは時に負け、時に勝ちながら、囲碁の手を進めるように進んで行く物語の構成力が素晴らしい。韓国や日本でドラマ化され、特に韓国では社会現象を起こした作品であると前評判も高かった。学歴社会や経済成長のひずみに落ちた主人公に共感したのかもしれない。日本でも同じような状況が続いて久しい。バブルは遠い夢物語になり、「悟り世代」と呼ばれる日本の若者たちにも、小さな碁盤の上のような社会の勝負を見て欲しい。(犬木加奈子)


プロフィール
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