文化庁メディア芸術祭
第21回

マンガ部門

優秀賞

AIの遺電子

山田 胡瓜 [日本]

© Yamada Kyuuri(Akitashoten)2015
作品概要

国民の1割がAIを持つヒューマノイドとなった近未来を舞台に、ロボットやヒューマノイドの問題を「治療」する専門医を描くSFオムニバス。主人公の医師・須堂光は、「モッガディート」という裏の名前を持ち、時には秘密裏に違法な施術も請け負う。例えば、本来違法であるヒューマノイドのデータのバックアップを取る際、妻をコンピュータウイルスに感染させてしまった男に対し、須堂はバックアップデータによって記憶を書き換える施術を提案する。バックアップデータによって換えられた存在は、果たしてそれまでと同じと言えるだろうか。人間と非人間の差異のなかに生まれる揺らぎという、古くから多くのSFで扱われてきたテーマを、医師の視点から描く。急速にAIに注目が集まる現代において、人間や社会の在り方についての考察を促す作品。作者はIT分野の元記者であり、本作にもその知識が生かされている。

贈賞理由

SFである。と同時に人生の機微を描いたドラマである。その両方がバラバラになることなく、必然性を持って結び付いている。それを1話完結の週刊連載でやりとげたことがすさまじい。ネタ切れになりそうなものだが、「巻を重ねたほうが面白くなる」と感心する委員もいた。多くの委員に支持され受賞となった。この作品では毎回さまざまな社会問題やドメスティックな問題を取り上げているが、主義主張から少し距離をとった大人のネームが、読者の多様な読み取りを可能にしている。AIのシンギュラリティを越えたところにある未来予想図として読むこともできるし、本来可能な機能を制限されて「人間らしく」生きることを義務づけられたヒューマノイドの姿に、社会の一部として生きる我々人間の悲しみを見ることもできる。広く読まれてよいSFマンガだと思う。(白井 弓子)


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