文化庁メディア芸術祭
第22回

マンガ部門

新人賞

メタモルフォーゼの縁側

鶴谷 香央理 [日本]

©︎ Kaori Tsurutani
作品概要

自宅で書道教室を開く75歳の市野井雪は、ふと立ち寄った書店で、表紙にひかれて1冊のマンガを買う。その内容は、2人の男子高校生の恋模様を描いたBLだった。これがきっかけで、書店でアルバイトとして働く17歳の女子高生、佐山うららとBLマンガの貸し借りをしたり、同人誌即売会に行ったりするようになる。夫に先立たれ、一人で暮らす雪の日常に新しい風が吹き込んだ。一方うららにとって雪は、BLの話をして一緒に盛り上がれる、初めての存在だった。歳の差58歳、立場も異なる2人が好きなものを通して距離を縮め、交流していく様子を温かく描き出すことで、幅広い層から支持を得た。作者のコミックスデビュー作。

贈賞理由

こんな友情、初めて見た。という驚きと、そして喜びを与えてくれる作品である。BLの物語は、暗黙のうちに「ハッピーエンド」という鉄則があり、童話より遥かに童話である。それは読者の、女性がゆえの生き辛さを反映して、それが必ず幸せという出口に繋がっているからである。祖母と孫ほどに歳が隔たった2人は、一見違和感があっても作品に描かれる「愛と幸せ」を共有する、得難い絆で繋がっている。その喜びと、背中合わせである切なさを見事に描き出していて、誠に愛すべき作品である。(西 炯子)

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