文化庁メディア芸術祭
第22回

マンガ部門

優秀賞

凪のお暇

コナリミサト [日本]

©︎ AKITASHOTEN
作品概要

人に嫌われないように周囲の空気を読んで生きてきた28歳のOL、大島凪。同僚の前でも、交際している我聞慎二の前でも、本音は口に出さずに我慢を続けてきた。唯一の趣味である節約に喜びを見出しながら暮らす凪だが、ある日自分について、同僚が陰口を叩いていること、慎二が仲間たちに「貧乏くさい女は無理」と言っていることを知る。ショックで過呼吸を起こした凪は会社を辞め、持ち物を整理し、くせっ毛を隠すためのストレートパーマも止め、郊外の小さな部屋で「お暇」生活を始める。テンポの良いセリフ回しとすっきりとした画風のコメディでありながら、「空気を読む」という現代の日本社会に生きる多くの人が経験する行為を題材に、人との関わりのなかで擦り切れたり歪んだりする心理も鋭く描いた。

贈賞理由

いつ「女性向けマンガでよく見るセリフ」「見慣れた展開」「いつもの落とし所」が現れるか、と思って読んでいってもそれは現れない。この作品はどこまでも誠実に、丁寧に、そして緻密に妥協なく「自分にとっての本当の納得と満足」を求める。女性主人公が悩んだ末に仕事を辞めて人生やり直す、とはよくある話だが、恋愛の成就や単なる劣等感の克服は、彼女という舟のたどり着く陸地にはなり得ない。彼女に関わる人物達も同様に「自分の上陸すべき陸地」を切ないほどの誠実さで探す。これは現在の、豊かであり価値観が多様化した日本を生きる人間が共有する、かつてなかった切実さであろう。誰かが名付けた「幸せ」が自分の安住先たり得ないと気づけば旅に出るしかなく、その旅の道連れは勇気である。これは女性コミック誌に掲載された作品であるが、人間誰もが生涯をかける壮大な冒険物語となっている点において、広い普遍性があると思う。(西 炯子)

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