文化庁メディア芸術祭
第22回

マンガ部門

大賞

ORIGIN

Boichi [韓国]

©︎ boichi, Kodansha 2019

作品概要

作品の舞台となるのは、あらゆる犯罪が流れ込む大都市となった西暦2048年の東京。そこでは限りなく人間に近い外見を持つ超高性能なAIを搭載したロボットたちにより、夜な夜な殺人が繰り返されていた。そんなロボットたちと敵対する主人公が、人間社会に溶け込むプロトタイプのロボット、オリジンである。オリジンは田中仁の名で世界企業AEEに入社し、自己のバージョンアップを繰り返しながら、科学者「父さん」につくられた兄弟ロボットたちと戦っている。オリジンは感情を持たずAIのプログラムに従って行動するが、彼の前に立ちはだかるロボットたちのリーダーには感情が芽生えており、オリジンが理解できない復讐心により襲いかかってくる。生き残るために合理的な判断を続けるオリジンは、一方でいつか自分にも感情というものが生まれることを期待している。その二重性は、読み手に人間の持つ感情の由来や意味を問いかける重要な要素と言える。20kgを超える炭化タングステン超合金の日本刀を武器に、時には自らの身体の破壊を顧みずに敵に向かっていくオリジンの戦いを、細密な書き込みと高い画力により描写した。細部まで描き込まれたSF設定と、ハードボイルドな世界観が、読者を強く惹きつける。

贈賞理由

まず絵に圧倒される。まつげの1本1本、ひそめた眉のわずかな陰影も見逃すまいとする精緻極まるキャラクターの作画。これらが可能にするのは、記号によらない複雑な感情の表現だ。あるいは、感情の「無さ」の表現(それはこの作品には必要不可欠なものだ)。また、かつての名作短編『HOTEL』で見せたSFとしてのつくり込みも健在である。30年後という難しい時代設定を豊富な知識とイマジネーションでリアルに描き出す、その力量に舌を巻く。一方で生活感あふれるパートや、激しいバトル描写と主人公に感情が無いこととの対比がもたらす何とも言えないユーモアもこの作品の特筆すべき点で、審査委員を沸かせた。凄惨なバトルシーンや女性の描き方など読者を選ぶ面もある。だがこの、母国を離れ日本を創作の場とした作者の魂が込められた作品のハイレベルさが、さらなるマンガの可能性を見せてくれたことは確かである。(白井 弓子)


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