文化庁メディア芸術祭
第22回

マンガ部門

新人賞

見えない違い——私はアスペルガー

マドモワゼル・カロリーヌ/原作:ジュリー・ダシェ/訳:原 正人 [フランス]

©︎ Éditions Delcourt / HARA Masato
作品概要

フランスでベストセラーを記録した、アスペルガー症候群と診断された女性の自伝を原作にしたバンド・デシネ作品。主人公のマルグリットは27歳の女性。仕事に就き、恋人もいるが、コミュニケーションがうまくいかず、人混みが苦手で、異常なほどに好き嫌いが激しい。そんな生きづらさを抱えたマルグリットが、恋人とのある事件をきっかけにアスペルガー症候群と診断され、自分らしさを獲得していくまでの3年間を描く。最初は灰色だけだったページが、次第に美しく色づいていき、自身に疑問を抱いていたマルグリットが、前向きに生きていくようになるまでの変化が表現されている。巻末には、フランスのアスペルガー症候群を取り巻く現状と課題、実践的なアドバイスなども収録。

贈賞理由

抽象と具象を兼ね備え、心象描写に長けるマンガ(バンド・デシネなども含めて)の特性は、世界の見え方・感じ方を異にする「少数者」を描き、理解するうえで有効である。本作では、主人公にストレスを与える出来事や状況を赤で塗り分けるなどの工夫で、客観と主観のずれを巧みに表している。同じ風景を見てはいるが、感じ方が違う。差異を可視化しつつも、越えがたい壁としては描かないこのバランスがアスペルガー症候群の理解には重要で、それはマンガならではのものだ。マンガの力を存分に生かし、読者の世界を広げてくれる点を高く評価したい。(表 智之)

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